2012年1月31日火曜日

自然治癒力という言葉

よく見聞きする 健康関連詭弁の一つ・・・人間の心身が持っている自然治癒力を高めることで治癒に導く・・・なんたら

 "(natural) healing"なる言葉も、テレビ・ラジオ・週刊誌や啓蒙本などの一部で見聞きする。

”自然治癒力”は確かに存在するし、創傷治癒においては基本的概念にすらなっている。癌においても、自然・獲得免疫を介して病巣への正の効果が期待できるだろう。

だが、”自然治癒力”という言葉には用心が必要だ。

Faith Healing (信仰療法)的用語でもある。

信仰療法としての意味合いを含む意味で、多くの人が目耳するテレビ・ラジオ・出版で、"自然治癒力”を取り扱われてることがある。

このFaith healingという言葉は、宗教的信仰、則ち、祈りや儀式によりもたらされるものと信じ込むという意味である。従順に守ることで、宗教指導者・シンボル、パワーにより疾患やハンディキャップの是正につながると信じることである。


信仰・宗教が悪いと言ってるのではない。

・ 特定の悪意を持った人間が、信仰心を利用して、治癒したい、ハンディキャップを克服したいという思いを悪用してしまったら
・ 妄信的状態となって、治癒に向かうと信じ、適切でないことに、コストや時間を消費してしまうとしたら

多くの人に共通する、社会的な損失をもたらすこととなるだろう。


マスメディアは、”Faith Healing”に関する言葉である”自然治癒力”を安易に使うべきではないと私は思う。

同様に、パワー(スポット)や、”ヒーリング”という言葉も・・・


英国の精神医学者、Louis Roseは、”Faith healing cure”に同調し、様々なhealerや患者たちとコミュニケーションをとっていたが、結論として、"I have been unsuccessful. After nearly twenty years of work I have yet to find one 'miracle cure'; and without that (or, alternatively, massive statistics which others must provide) I cannot be convinced of the efficacy of what is commonly termed faith healing." [Rose L. Faith Healing. Baltimore: Penguin Books, 1971. ] (http://www.quackwatch.com/01QuackeryRelatedTopics/faith.html)



◆ 福音・伝道的Healer(エバンゲリオン的治療者)

・ Nolen W. Healing: A Doctor in Search of a Miracle. New York, 1974, Random House Inc.
 25名の奇跡的治癒の報告、中には肺癌も(実はホジキン病であった)

・ Emery CE. Are they really cured? Providence Sunday Journal Magazine, Jan 15, 1989.
数千人ものヒーリングを行ったというRoman CAtholic祈祷;6ヶ月調査で誰1人援助できたものはいなかった

・ Randi J. The Faith Healers. Amherst, N.Y.: Prometheus Books,1987.
 もっとも包括的な調査がされたhealer、James Randiで、ごまかしといんちきで如何に


金儲けしたか・・・ Randiは、Peter Popoff、Johnny Carson Showなども暴露

 ◆ Intercessory Prayer :代理祈祷
Intercessory prayer is prayer for others. An intercessor is one who takes the place of another or pleads another's case.



2001年 Mayo Clinicの研究者たちは、intercessory prayerの効果が臨床的アウトカムにおいて効果が無いことを示した(Aviles JM and others. Intercessory prayer and cardiovascular disease progression in a coronary care unit population: A randomized controlled trial. Mayo Clinic Proceedings 26:1192-19198, 2001. )。


”Intercessory prayer studies accomplish nothing. ”


信者たちは、負のエビデンスを提示しても信念を変えない



◆いんちきスピリチュアル

日本でもよくある、”あなたには疫病神がついている・・・”ということで、金を無心する詐欺
 1970年代の"Mother McGown," "Mother Luther," "Mother Alma"問題



ほんとにスピリチュアルで人は救われるのか?

8割の人が"spiritual faith”を有しているという米国の話。信心と健康の正の相関を示す多くの報告があるが、しかしながら、研究デザインとして正しいものはない。ひとつの研究は反するものであった(Gorski T. Should religion and spiritual concerns be more influential in health care? No. Priorities 12(1):23-26, 41, 2000.)。




推奨:

信者は、問題があると思わない。多くの非信者は少なくとも最優先とは思わないし、共感を感じることは少ない。しかし、社会を守るため以下のことは行うべき
  • 子供をヒーリングという名の下、医療から遠ざけるなら、法的に守るべき。それらは非合法的のものとすべき
  • Faith healing は、医療費控除とすべきではない
  • “治癒”と称している症齢のフォローアップ報告がなされるべき。
  • 大金を巻き上げ、トリッキーな手法を使う"Healer"は、詐欺・窃盗として起訴されるべき.


マスメディアが”ヒーリング”や”(スピリチュアル)スポット”など・・・NHKですら、おおっぴらに包装している。
何らか、特定の"healer"たちへの利益供与となってなければ良いのだが・・・



明らかに意図的に、この種の言葉を多用し、faith healingへ誘導しているラジオ番組や特定のキャスターの存在に、お気づきだろうか?かれらの言葉でfaith healingの概念や言葉が日常化する。これが、一般人の警戒心を緩めることにつながる。それがいんちきスピリチュアルにだまされる素地を増やすことにつながっているのである。かれらの言動は、公共放送という建前上、公序良俗上の問題となるだろう。



メディアで日常茶飯事的に”霊的なもの”、”気”や”パワー”・”運”なるあいまいなものが取り上げられ、警戒心が薄れるとしたら、それは、問題となる悪質商売のターゲットのgatewayとなる。
公的であるはずの宝くじのCMにすら“運”という言葉を多用すること、それも、実は、詐欺商売に荷担していることになる。

開運ブレスレットや数珠の購入をきっかけに、“除霊のため”“運気を上昇させるため”と、次々に開運商品を売りつける手口に要注意!
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120202_1.html


1.雑誌広告などを見て、「願いが叶(かな)う」開運ブレスレットや数珠をハガキなどで申し込む


2.開運ブレスレットや数珠が送られてくる

3.商品に同封されていた手紙に、「使い方を説明するので電話をかけてください」と書いてあり、指示にしたがう

4.電話で話をしているうちに、業者に悩みを打ち明ける

5.「あなたには自殺する運気がある」「霊がついている」などと言われて、運気を改善するためにと新たな開運商品(祈祷サービス、霊石など)を勧誘される

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