2012年1月31日火曜日

肺炎球菌毒素防御メカニズム:成長ホルモン放出ホルモンシグナリング経路

肺炎球菌は肺炎の半数近くの原因細菌だが、致死性の毒素を有し、放出する。成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)に類似したアゴニストを加えると第二波を抑制できる。

GHRHシグナル化経路の肺胞障害・血管内皮障害への防御的メカニズム が明らかに


Agonist of growth hormone-releasing hormone reduces pneumolysin-induced pulmonary permeability edema
Rudolf Luca et. al.
Published online before print January 23, 2012, doi: 10.1073/pnas.1121075109
PNAS January 23, 2012 


肺炎球菌感染患者への積極的抗生剤治療は bacterial virulence factor  pneumolysin(PLY)の遊離を生じる。
pneumolysiは組織障害性として組織融解酸素であり、コレステロールと結合し、気腔内の整列する細胞である肺胞細胞表面に存在し、一度膜に接触すると、毒素が細胞表面に孔を開け、毛細血管にも同様のダメージを生じる。則ち、肺胞・毛細血管バリア機能障害、肺胞水クリアランス(ALC)障害をもたらし、水交換やガス交換を障害し、ナトリウム取り込みを阻害する。


ALCはNa+輸送により調整され、典型的には上皮Naチャンネル(ENaC)、II型肺胞上皮細胞の基底上皮側Na+/K+-ATPaseが主な発現部位である。
ヒト肺微小血管内皮細胞(HL-MVEC)において、GHRHと共に、視床下部ポリペプチド成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)のactive receptor splice variant SV1を発現するmRNAを同定した。GHRHアゴニスト JI-34のPLY誘発バリアとALC機能障害への影響を検討。
JI-34 は、単層HL-MVECでPLY-mediated endothelial hyperpermeabilityを鈍化させ、cAMP依存的に、myosin短鎖と血管内皮cadherinのリン酸化減少を生じた。
ヒト内皮H441細胞において、PLYはNa+再吸収を阻害するが、JI-34はcAMP値増加によって既定レベルに回復する。
C57BL6マウスへの気管内PLY投与で、肺胞上皮・血管内皮の透過性亢進、浮腫を生じ、JI-34で鈍化する。
これらの知見により、PLY誘起透過性亢進に対する、GHRHシグナリング経路による防御的役割が明らかとなった。


 ニューモリシンとは

 肺炎球菌はさまざま病原因子を有していますが、その中でもニューモリシンはコレステロールを含む細胞膜を融解し、宿主細胞にさまざまな障害をおよぼす菌体内毒素です。
ニューモリシンは感染初期において、肺胞上皮細胞や血管内皮細胞を障害し、菌の増殖や播種を促進します。また、免疫細胞や炎症細胞への直接障害作用や補体の活性化作用も有し、肺の間質や血中からの肺炎球菌の排除を妨げます。
このようにニューモリシンは肺炎や菌血症の発症および進展において重要な役割を担っている主要な病原因子です。

 http://medical.radionikkei.jp/abbott/final/pdf/041210.pdf

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