Wegener肉芽腫症は(PR-3ANCA)が関与する血管炎症候群であり、一般診療上の検査としては、現在PR3-ANCA(C-ANCA)測定がなされる。一方、MPO-ANCAは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)やアレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)にみられるということで測定がなされる。
以下の報告は、ANCA抗体の特殊性そのものが疾患区分の本体であり、臨床的表現型そのものが疾患の根本ではないという概念の大幅変更が迫られている・・・と解釈した。
結語としては、「ANCA関連血管炎の病因は遺伝的コンポーネントがあり、granulomatosis with polyangiitis と顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis)の遺伝的鑑別点はANCA特異性にある。autoantigen proteinase 3に対する反応はproteinase 3 ANCA–associated vasculitisの病因的特性の中心である。
これらのデータから、proteinase 3 ANCA–associated vasculitisと、 myeloperoxidase ANCA–associated vasculitis は異なる自己免疫症候群であることが予備的に支持される」
Genetically Distinct Subsets within ANCA-Associated Vasculitis
Paul A. Lyons, et. al.
N Engl J Med 2012; 367:214-223July 19, 2012
1233名のUKのANCA関連血管炎のコホート、対照 5884名
ANCA関連血管炎では、MHC相関、非MHC相関を認め、granulomatosis with polyangiitis とmicroscopic polyangiitisは遺伝的に異なった。
この遺伝的相関は、ANCAに対する抗原特異的なものであり、臨床的症候群によるものではない。
Anti–proteinase 3 ANCA は、 HLA-DP と、 α1-antitrypsin (SERPINA1) と proteinase 3 (PRTN3) エンコード遺伝子と相関(P=6.2×10
−89, P=5.6×10
−12, P=2.6×10
−7)
Anti–myeloperoxidase ANCA は HLA-DQ (P=2.1×10
−8)と相関。
(Funded by the British Heart Foundation and others.)
【序文一部訳】
Antineutrophil cytoplasmic antibody (ANCA)関連血管炎は、全身性の小血管炎で、3つの症候群からなる
・granulomatosis with polyangiitis (formerly known as Wegener's granulomatosis)
・microscopic polyangiitis
・Churg–Strauss syndrome
生命危機に関わる腎不全、肺出血の原因として、5年での死亡率28%で、生存者間の長期合併症の原因となる。
Granulomatosis with polyangiitis と microscopic polyangiitisは主要な臨床症候群であり、前者は呼吸器系肉芽腫性炎症と66%の患者に検出される“neutrophil granule serine protease proteinase 3"への自己抗体。24%に他のneutrophil granule component, myeloperoxidaseへの抗体が検出される (myeloperoxidase ANCA–associated vasculitisと考えられる)
顕微鏡的多発血管炎は58%の症例でmyeloperoxidase ANCAと関連、26%が proteinase 3 ANCAと関連。
ANCA-陰性症例では50%超で uncommon Churg-Strauss症候群
ANCA関連血管炎に寄与する遺伝子分布は、家族関連性エビデンスを含み増加。 MHC、 locus HLA DPB1*0401など。ANCA関連血管炎と、α1アンチトリプシンをencodeする稀なserpin A1 gene (SERPINA1) Z (or null) allele 、proteinase 3のserine proteinase inhibitor もいくつかの基質の一つである
granulomatosis with polyangiitisと microscopic polyangiitis は格別される疾患であるか、単一疾患のスペクトラムなのかの議論が続いている。
単一疾患スペクトラム概念として、治療戦略がなされている事実もあり、もし、病因が異なるものであるなら、疾患特異的治療戦略がなされることにもなる。
ANCA関連血管炎の病因として自己抗体反応性に議論がある。ANCAは診断ツールとして重要であるが、疾患活動性とはゆるい関連性しかない。
in vitroのエビデンスではANCAは炎症惹起性を示し、myeloperosidase ANCAとproteinase 3 ANCAのtransferモデルとして疾患類似性をある程度示す。
proteinase 3 ANCAと、myeloperoxidase ANCAは病因として重要だが、疾患のdriverというよりepiphnomenaとして重要な可能性がある。